犬は3歳以上になると8割が歯周病(または歯周病予備軍)だという統計があります。
歯周病になってしまうと口臭トラブルだけでなく、命にかかわるトラブルも引きおこしてしまうので、正しい歯磨きの方法やアイテムを使って、お口のトラブルを予防していきましょう。
歯周病の危険性や、治療方法とその費用についてもご紹介していきたいと思います。
この記事でわかること
愛犬の歯磨きの頻度は最低でも2~3日に1回
犬の歯垢は3日で歯石になるので、愛犬が歯科に通っていた時は「2~3日に1回は歯磨きをしてあげてね」と獣医師から指導がありました。人間は25日で歯石になるので、犬は8倍ものスピードでお口の中が進行していきます。
もちろん毎日歯磨きをしてあげられるのであれば、それが一番の歯周病予防となりますので、可能なかぎり歯磨きをしてあげてくださいね。
歯磨きは人間の歯ブラシが便利
犬用の歯ブラシも売っていますが、人間用の歯ブラシはヘッドの大きさや形がたくさんあるのでとっても便利!小型犬には子供用の歯ブラシや、ヘッドが山型になっているワンタフトブラシがおすすめです。
大型犬の場合は大人用の歯ブラシから、その子の口や歯のサイズに合わせたヘッドを選んであげてください。歯周ポケットの仕上げ磨きにワンタフトブラシを使うのも、歯周病予防には最適です。
上手に歯磨きをするコツ
- 口に触れられることに慣らす
- ガーゼや歯磨きシートで指ハミガキ
- 歯ブラシに慣れる
いきなり歯ブラシではじめるのは、愛犬にとっても飼い主にとってもハードルが高いですよね。最終的に歯ブラシでハミガキをできるように、コツをご紹介していきたいと思います。
口に触れられることに慣らす
(+犬用歯磨き粉)
犬にとって口は急所なので、基本的には触れられるのを嫌がります。なので、まずは口の周りをいろいろと触ってみましょう。
嫌がらなくなったら口の中に指を入れて歯を触ってみてください。それにも慣れたら犬用の歯磨き粉を指にぬって、もう一度犬の歯を触ってみましょう。まずはこれで終了です。
ガーゼや歯磨きシートで指ハミガキ
口に触れられることに慣れてきたら、ガーゼや市販の歯磨きシートを指に巻いて歯をなでるように磨きましょう。前歯は敏感なので、犬歯や奥歯から慣らしていくのがおすすめです。
とくに奥歯は唾液がたまるので、慣れていない子は奥歯だけでも拭ってあげるといいですよ。指ハミガキに慣れるまで無理に歯ブラシに持ちかえず、愛犬の様子次第ですすめていきましょう。
歯ブラシに慣れる
愛犬の口や歯の大きさに合った歯ブラシを用意しましょう。急に歯ブラシを口に入れるのではなく、「怖いものではない」ということを認識させることが大切です。飼い主の歯磨きの様子を愛犬に見せるのも効果的ですよ。
歯ブラシが安全なものだと認識したら、まずは1本磨いてみましょう。いっきに全部磨かなくていいので、少しずつ磨く本数を増やしていけば大丈夫です。愛犬の様子をみながら、ゆっくりステップアップしていってくださいね。
犬にキシリトール入りのガムは有毒
歯ブラシ以外での歯磨き方法として“歯磨きガム”が多く販売されています。歯磨きガムで歯周病予防は有効的とまでは言えませんが、ガムをかむことで唾液がたくさん出るので、その点では多少期待できるかと思います。
歯磨きガムの中にはキシリトールが含まれている場合があります。人間の虫歯予防にとっては効果のある成分ですが、犬の場合は全く効果がないうえに、低血糖症になる可能性があるので注意が必要です。
低血糖症の症状
- ぐったりする
- けいれんを起こす
- 意識を失う
- 失明
これらの症状を発症するリスクがあるので、歯磨きガムを与える場合は原材料をしっかりと確認してくださいね。
犬の歯周病は命のキケンも
歯周病は口の中だけのトラブルではありません!命のキケンまである、とっても恐ろしい病気なんです。犬にとってはキケンな歯周病の症状や、歯周病が原因で引きおこす病気をみていきましょう。
歯周病の症状
- 歯ぐきが赤い
- 口臭がきつい
- 歯がぐらぐらする
- 歯ぐきが後退している
- 目の下や上あご、下あごが腫れている
- 口を痛がる
- 食欲がない
- 硬いものが食べられない
- 口の膿が鼻から出てくる
これらの症状がみられる場合は歯周病になっています。すでに全身麻酔で歯石除去や抜歯が必要な状態になっていますので、すぐに動物病院でみてもらいましょう。
歯周病が原因で引きおこす病気
- 歯ぐきが後退して歯が抜ける
- 歯の根元に膿がたまり、あごの骨を溶かす
- あごの骨が弱くなる
- 心不全/腎不全
歯周病を放置していると、膿がたまって周辺の骨を溶かして皮膚にまで穴をあけてしまいます。また、歯周病の菌が全身を回ると発熱をおこし、心臓や腎臓まで達して心不全や腎不全を引きおこします。
“お口の病気”と軽く考えていると取り返しのつかないことになりますので、必ず治療を行ってください。
犬の歯周病の治療方法
歯周病の治療法としては2つ
- 歯垢と歯石を除去する
- 歯周病の原因となる病気の治療
という方法があります。お口のトラブルからの歯周病の場合は、歯垢・歯石除去という治療法が行われますが、「糖尿病」などの病気が原因で歯周病になってしまった場合は、そちらの治療も並行して行われます。
歯石除去は全身麻酔で行われるため、治療を行う前に検査があります。
治療前の検査と費用
検査項目 | 費用 | 目的 |
---|---|---|
血液検査 | 5,000円前後 | ・全身麻酔に耐えられるか ・糖尿病などの病気がないか |
抗生剤 (5日分) |
1,000円~ | ・歯石除去までに口の中の菌をやっつける (獣医師により処方の有無がわかれる) |
麻酔は肝臓で解毒され、腎臓から体外に出されるのですが、肝臓・腎臓の数値が悪いと麻酔をかけることができません。また、血液検査の数値に問題がなくても全身麻酔にはリスクがあります。
全身麻酔により命を失う場合もありますので、獣医師とよく相談をしてから処置をしてもらいましょう。
無麻酔による歯石除去もありますが、犬にとってはものすごいストレスとなる場合や、歯周ポケットまで歯石を取りのぞくことができない場合があります。
その子の年齢や性格、歯周病の進行具合を考慮して、どのような治療を進めていくのかを信頼できる獣医師と相談してください。
歯石除去の項目と費用
検査項目 | 費用 | 目的 |
---|---|---|
歯石除去 (全身麻酔) |
2万円 | ・歯垢 ・歯石除去 |
レーザー照射 | 5,000円 | ・歯肉炎治療 |
処置 | 5,000円 | ・根管治療+修復 |
抜歯(1本) | 1,000円~ 2,000円 |
・進行がひどい場合 |
抗生剤 (5日分) |
1,000円~ | ・感染症を防ぐ |
せっかく全身麻酔で治療をしても、歯磨きをしなければ3日で歯石は付きはじめますのでしっかりと歯磨きをしてくださいね。
犬の歯周病ケアまとめ
犬の歯周病はキケンな病気ということを認識していただけましたか?
生後7~8カ月で永久歯に生え変わるため、パピーの時期から口に触る習慣をつけておくと歯ブラシに移行しやすいので、永久歯に生え変わる前から歯磨きのステップを踏んでみてくださいね。